2006年01月23日

ガイアの夜明け「青森を世界に売れ」

テレビ東京の「ガイヤの夜明け」はテーマに興味がある場合だけ観ているが、アップテンポの番組である。2006/1/17放映の「青森を世界に売れ」はオルタスジャパン制作。テレビ東京、22:00〜22:54。

青森県庁内にひとつの商社「青森ブランド」が生まれた。商売人への転身である。

世界へ挑むベビーホタテ

主役は青森県職員(総合販売戦略課)の藤森洋貴(ひろたか)さん、40歳。
2004年のホタテ生産量は、青森が全国2位で約9万5000トン。8割が北海道産。安い中国産も入ってきているが、青森産は甘みがあり味がぜんぜんちがう。1年もののベビーホタテを、1日に7トン加工する。
経済発展が著しいアジアは巨大胃袋。青森県の招きでやってきたのは、鄭(てい)建仁さん。台湾・食品メーカーバイヤーである。
青森は初めてだが、よい製品があれば輸入も考えているという鄭さんを、水産市場へ案内する。
鄭さんのベビーホタテについての感想。
「台湾の消費者が買うかどうか。ぼくはおいしいが、みんなは買えない」

片山りんご園

片山寿伸さん(45歳)は嘆息する。
「安い果物がいっぱいある。りんごだけ高く売れない。だれもりんごを食ってくれない。わしらは見棄てられた」
味や質がよくても値段が張る青森りんごの売り上げは、年々落ちている。安い輸入果物に押されているのだ。
片山さんは40年つづくりんご農家の2代目。
「日本国内では売り余すときがくる。ヨーロッパや中国にいまから売っておけば、農家が助かる道になるかもしれん」
毎年10月になると、弘前のりんご農家の1年の売り上げが決まる。片山さんは個人のインターネット販売もはじめた。
昔は獲れた分を全部市場に出荷していた。いまは、スーパーや量販店への直接販売が6割以上を占める。
「おそらく生産原価を割るよ、黙って市場にだしていたら。量販店や生協と直接契約しなければ、食っていけねえのよ」と片山さん。

片山さんはパソコンにむかう。手許には英語の辞書。ヨーロッパにりんごを売り込むことにしたのである。1992年、スペインの果物商社に勤め、世界を相手にりんごの取り引きをしていた。1年間スペインで働いていた経験から片山さんは思いつく。
「日本人が食ってくれないなら、ヨーロッパにだしてみよう」
手づくりのパンフレットでイメージしたのは日の丸。トップに大きく NIPPON 1-BAN とある。

ヨーロッパ最大の果物見本市

昨年2月、ドイツのベルリンでが開かれたフルーツ・ロジスティカ (Fruit Logistica) 2005/ 国際果実・野菜・マーケテイング専門見本市
1400社もの果物会社が集まるなかで、りんごは最も競争の激しい商品のひとつ。
中国産ふじは、1キロ約80円。片山さんの日本産ふじは、1キロ280円。

ブースでの評判。
イタリア人バイヤー「おいしいが高い」
中国人バイヤー  「高い」
スペイン人バイヤー「ヨーロッパ人は1本のワインに1万円以上払う人はいます。りんごに280円だす人はいません」

ベルリン青空市場にて片山さんの感想。
「日本と全然品種がちがいますね。日本と同じ品種は、ジョナゴールドと中国産ふじだけ。どれもこれも酸味のある品種ばっかりだ」
ヨーロッパで売られているりんごは、1キロ約140円。
片山さんは、ピンクレディーという新しい品種のりんごをみつける。ニュージーランドで開発された高級りんごで、1キロ約550円。
片山さんに一条の光が射す。
「これなら日本の小玉りんごが販売できるかもしれない。高級店なら可能性はあります」

おいしくて珍しい品種なら高くても売れる!

帰国した片山さんを迎えたのは、17年ぶりの大雪。りんごは自然との闘い。
ユーレップギャップというヨーロッパの生産基準をクリアしないと、ヨーロッパに輸出できない。日本でユーレップギャップ認証を取得したのは、片山さんを含む2軒だけ。

9月。りんごの葉をていねいに摘みとる作業をする。ひとつひとつのりんごに日光を当てて真っ赤に色づけるため。海外ではほとんど行われていない。こうした手間暇かけた作業が、品質のよい日本のりんごを作っている。

シナノゴールドで勝負

7年前に開発された品種。甘さも十分で瑞々しい。しかも片山さんたちの実験で、1年間保存してもおいしさが変わらないということがわかった。長期保存できるということは、船便での輸送に堪えられる。まさにヨーロッパにうってつけの商品。
さっそくサンプルをスペインの商社にもちこむ。
出荷で忙しい片山さんの代わりに、相棒の山野豊さん(青森りんご品質管理担当)がスペインでの商談を任される。
交渉するのは、果物卸商社・サンチェス。ヨーロッパ全土と取り引きがあり、4割がりんご。吟味した販売の責任者のシナノゴールドに対する反応は、「すごく瑞々しい」。

台湾・高雄での青森物産展

人々の食に対する関心が高い台湾で「青森物産展」が開かれることになった。日系の大手デパート「大立伊勢丹」開業13周年の目玉である。
開店と同時に台湾の客が殺到したのは、りんご売り場。台湾では青森のりんごは、高級りんごとして人気が高い。

一方、2トン以上もちこんだベビーホタテは、ぜんぜん売れない。目のまえで調理してみせる作戦で客の足が止まり、試食に手が伸びる。おいしくて簡単に食べられるとわかると売れはじめた。さらに客どうしのクチコミで売れはじめる。
物産展のあとで設けられた商談会場に、台湾のバイヤーたちがこぞってやってくる。春に商談を断った鄭さんもやってきた。
藤森「こういうおいしい味で値段は高い」
鄭 「チャンスができるかもしれない」

藤森さんは明るい顔でいう。
「少しでも可能性があれば、チャンスをみつけて改めていく」

青森でスペインからの朗報を待つ片山さん

会社でコンピューターにむかう片山さんに、山野さんから電話が入る。
山野「みせた。買ってもらった。値段に見合う販売先を探してくれると思う」
1ヵ月後、スペインの高級スーパーに、片山さんのりんごを卸す話が進みはじめた。価格は1キロ2.5ユーロ(約350円)。

りんご農園でりんごの木の芽に触れながら、片山さんは自らにいいきかせるようにつぶやく。
「この芽をみたら、やらざるをえねえのよ」

■感想
りんご農家が苦境に立っていることを、本番組を観るまで知らなかった。それにしても、青森県の職員が商社マンに変身せざるをえないとは驚かされる。どこを向いても生き残りに躍起な世界が展開されていて、窒息しそうになる。
日本人がみかんを食べなくなったのは、家族が集まる居間でみかんを食べるという文化が失われたことと関係があるという説がある。りんごについても同列なのだろうか。

海外のりんごに酸味が強いのは調理して食べるからだという。日本のりんごを売り込むには、生で食べておいしいということと同時に、健康によいという要素を強調したらよいのではないか。
わたしが最も好きなりんごは「つがる」である。味も姿もよい。酷暑のあとに「つがる」を店頭にみつけると、生き返ったような気分になる。最も多く食するのは「ふじ」。知人の信州出身者から送られる「ふじ」は、他と比較にならないほど美味。ところが、都内に住む友人が送ってくれた青森の「ふじ」は、彼女の母親の出身地が青森の故か、上記の信州産を超えるほどの絶品だった。信州産より青森産のほうが瑞々しいように思う。
信州の産地直送の無農薬「ふじ」を友人が送ってくれたが、驚くほど美味ではなかった。りんご農家の熱意が伝わる長い文章が添えられていた。
生協のりんごはおいしかったのだが、6年ほどまえから急にまずくなった。なぜなのか。
片山さんのりんごを通販で求めてみようかと思う。ちがいを確かめてみたくなった。

日本の果物や野菜の味が、どんどんまずくなっている。昔に比して栄養価も劣っているらしい。それらを食する子どもたちの身体に、どのような変化があるのだろか。

〔参照〕
「りんご〜Apple〜」

「ユーレップギャップ」(EUREPGAP:欧州小売業組合適正農業規範)

「農業情報コンサルティング株式会社」

待望のりんご中性種「シナノゴールド」



〔追記 2006/1/27〕
片山林檎園に注文したサンふじ(無袋ふじ)が昨日届いた。
さっそく食してみたところ、生協で求めるのと同じ味である。昨日より本日のほうが甘みとこくのようなものが、すこし加わったという感じがする。
私事だが、2月の亡父の祥月命日に、片山林檎園のりんごを送ってもらうよう手配した。いつもは和菓子を送っているのだが、本番組を観た記念として。
余談だが、百貨店から贈られる高価な産地直送の果物セットも感心しない。わたしの食生活はいたって質素なのだが、子どものころより味覚が鈍くないので困ることが多い。
いまの日本では、「高価だから美味」といえないケースが多いと思う。海外では通用しないことが、わが国なら通用するのが不思議だ。



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この記事へのコメント

1. Posted by 小向   2006年01月27日 11:39
 日本のりんごは中国や台湾ではとても高価になるけれど買う人はいると聞いたことがあります。中国人には目上の人に贈り物をする習慣があり高い物を無理してでも贈るようです。昇進に便宜を図ってもらう目的からだとか。ワイロのやりとりが常習化している社会のようです。
 僕は子供の頃「あさひ」という品種のりんごをよく食べさせてもらっていました。皮が真っ赤で柔らかく果肉がみずみずしくて酸味と甘みが強いりんごです。一番好きな品種だったのですが、最近はほとんど見かけません。活きのいい「あさひ」は本当においしかったです。
 茶の間で家族みんなでテレビを見ながらみかんを食べる光景、冬になればそれが当たり前のようでしたね。今はわが家でもすっかりそういう場面がなくなりました。なつかしいけれど子供に無理強いするのも変な気がして、団欒のあり方は自然に任せるようにしています。
2. Posted by miko   2006年01月27日 22:57
片山林檎園のりんごを賞味しました。〔追記〕をお読みくださいませ。
「あさひ」という品種をわたしは知りませんが、酸味が強い品種は敬遠されるのかもしれませんね。紅玉も店頭に並びませんから。

家族の風景が急激に変わっていますね。パソコンの登場も大きいです。私自身はひとりでなにかをするのが好きなので、家族がバラバラに動くのに違和感はないのですが、小向さんなら寂しくお感じになるかもしれませんね。