2006年05月30日

BSドキュメンタリー「国境地帯の避難民を救え〜シンシアと国際医師団〜」

06/05/27(12:10〜13:00)、BS1放映の「国境地帯の避難民を救え〜シンシアと国際医師団〜」(再放送)を観た。制作・アマゾン。語り・昼間敬仁。

…………………………………………………………………………………………

〈NHKのHPより番組案内を引用〉

 ミャンマーと国境を接するタイ西部のジャングル地帯。ミャンマー軍事政権下の経済危機を逃れて市民が国境を不法に越えている。その数は200万人とも言われ、ジャングルの中で飢えと病気に苦しんでいる。
 この大量の避難民に対して無料で医療を施している診療所がある。ミャンマー人の女医シンシア・マウンさんが率いるメータオ・クリニックだ。自らも避難民であるマウン医師は17年前、人々の惨状に接し、この地に踏みとどまって小さな診療所を開いた。彼女の意思に共感し世界各国から無償のボランティアたちが集結。今では医師8人、スタッフ100人余りが毎日300人を越える避難民の診察に当たっている。
 数々の賞に輝き国際的な評価を得ているクリニックの活動だが、乏しい資金と貧弱な設備の中、救える命を救うことが出来ず厳しい現実に立ち尽くすことも多い。必死の医療活動を続けるスタッフたちの姿を定点取材した。


……………………………………………………………………………………………………

重いテーマの本番組を観るだけの精神力に欠ける状態だったので、途中でやめるつもりで録画を観たのだが、最後まで見入ってしまった。過剰なナレーション・音楽・テロップがないので、映像が脳裡に焼きつく。
NHK臭さのない自然なカメラワークが心地よい。
一方で、BBCなら同じテーマをどのように撮るだろうか、という余計なことも考えた。
こういう番組を観ると、TVというのはいいものだなあと思う。わたしのような無知な人間にとって、知らない世界を知り、それを契機に考えさせられることが多い。

シンシア医師の表情がいい。淡々としていて寡黙である。弛緩した表情の人間が多く登場し、空疎な言葉を垂れ流すTV画面を日々眼にしているので、とても新鮮だ。
シンシア医師は自宅で10数人の孤児を育てている。彼らを実際に生んだといわれてもおかしくないほど、彼女は豊かな体躯である。
野菜がたっぷり入ったチャーハンをつくって食べさせている映像が流れた。ふつうのお母さんという風情だ。医師として活動しているときと、チャーハンをつくっているときの彼女の表情・動きが同じにみえる。
常に自然体なのだろう。

とくに「バックパック診療活動チーム」の映像には瞠目した。国内避難民を診療するために編成されたチームが、それぞれ20キロ(と記憶している)のリュックを背負ってジャングルに入ってゆく。

ラストは、無料診療所「メータオ・クリニック」での出産シーン。
本番組に限らず、わたしは出産シーンを観るのが嫌いだ。ワンパターンの撮りかたも気に入らないし、女性が誇らしげな顔で出産に臨んでいるのに閉口する。すべての動物が行なう出産に対して、人間を特別扱いするのに抵抗がある。
わたしの感覚がおかしいのだろう。この世に誕生することがそんなにすばらしいことなのか、という懐疑からわたしが解放されていないからにちがいない。

しかしそんなわたしの勝手な思惑は、この「メータオ・クリニック」では通用しない。
国籍のない親から生まれた子は出生届けをだせないが、それでも出生証明書を発行しているという。人間の尊厳を、悲惨な生活のなかで貫こうとする思想のあらわれである。
マラリアと栄養失調の蔓延した世界で生命が誕生しているにもかかわらず、奇妙な明るさが漂っているのはなぜなのか。

本番組から、日本では妙な動きがある愛国心について考えさせられた。
番組では触れなかったが、日本は難民支援に熱心ではないらしい。
シンシア医師のように多様な民族の価値観を尊重できる人間が、真の愛国心をもてるのだろう。


〔参照〕

ビルマにおける紛争・地雷・医療

シンシア・マウンさん

「アリンヤウン」(ビルマ市民フォーラム ニュースレター 特別号 2002年10月発行)――ドクター・シンシアに聞く  文:山本宗補(ビルマ市民フォーラム運営委員)


「メータオ・クリニックに見るビルマの現実」(タイ・ビルマ国境の無料診療所) [週刊金曜日2002年8月2日号掲載] 写真・文 山本宗補

  




miko3355 at 15:46│TrackBack(0)TV・ラジオ 

トラックバックURL