2006年06月08日

ガイヤの夜明け「巨大家具メーカー攻防」

2006/05/23、テレビ東京放映のガイヤの夜明け「巨大家具メーカー攻防」を観た。
制作協力・オルタスジャパン

全体的に音楽が過剰である。せめて音量を小さくしてもらえないだろうか。
「ガイヤの夜明け」は、案内役:役所広司、ナレーター:蟹江敬三ということで固定している。
オープニングとエンディングに登場するとぼけた口調の役所広司の案内に、いつもわたしは調子を狂わされる。アップテンポで、案内なしで通してくれたほうがすっきりする。どういう効果を狙っているのだろうか。

以下、番組内容を追っていく。

◆ライフスタイルに左右される家具業界の闘い

現代の居間はシンプルで、収納スペースをつくりつけにするのが主流。
空間を広くとるために、家具はできるだけ置かない。
家のなかから家具が減っていく。

◆ニトリのソファ新戦略

1967年、札幌で似鳥家具店として創業。
現在は135店舗。ことしはさらに20店舗近くふやそうともくろんでいる。
社長は似鳥昭雄さん、62歳。
ニトリはコストの安いアジアに工場をもち、自社開発商品をふやすことで低価格を実現してきた。安さを最大の武器にしてシェアを拡げ、10年で急成長。売り上げは6倍に伸びた。

昨年、インドネシアについで2番目の海外工場を、ベトナム・ハノイに造った。製造工程でできた小さな端材を、底板の補強などみえないところに使うことで、年間8000万円が浮く。
端材をつなぎあわせる作業を映していたが、わたしは強度に不安をおぼえた。

4月14日、ニトリ千葉・長沼店オープン。
4月24日、千葉・船橋に、世界最大の家具チェーン・イケヤ第1号店オープン。初日の来店者数は3万5000人。半径15キロの圏内にニトリの9店舗が入るかたちになった。

似鳥社長 「周りの店はイケアの影響を考慮した予算を立てたが、わたしたちが予想したほど業績は下がっていない」

3月27日、札幌・ニトリ本部にて、定例幹部会議。
春のシーズン、ニトリ全体で売り上げの伸びが落ちていた。
社長は、商品の種類を3分の2まで減らす決断をした。
2020年までに「目標1000店、売り上げ1兆円」を掲げ、海外進出までめざしている。

似鳥社長 「いままでの成功体験を全部否定しないといけない。これが一番の難問関門でね」

ニトリ商品開発担当の相澤修一さん(41歳)は、現在50種類あるソファの責任者。
「安くて質がよいものを作るのはたいへん」という相澤さんが、2004年に売りだしたリクライニングソファは、1万4000台を超す大ヒット。ふつうなら20万円近くするものを、はじめて10万円を切る値段。

相澤 「やっぱり未知の部分がありますので、はたして絞りこんだアイテムがほんとうに売れるのだろうか、という不安がまず一番先に」

相澤さんは、50種類あるソファを利益率の低い商品からふるいにかけていく。価格を下げることができないなら取り引きを中止せざるを得ない。開発の苦労を共にしてきたメーカーを切らなければならないという苦渋の選択を迫られた。

相澤さんは、個性の光るソファを選ぶ目的でタイ・バンコクにむかう。デザインに実績がある、ニトリと取り引きのある工場で相澤さんが選んだのは、丸みを帯びたデザインのソファ。座る位置の高さがニトリの基準に合っているか、入念にチェックする。ソファの弾力性を自分の足で確かめる。

ニトリ本部。
相澤さんが社長に提案する。
商品をタイプ別に分けて似ていないものを選び、50種類あったソファを半分に絞った。そこへ相澤さんが開発した新商品を入れた。
「たいへんけっこうだと思います」という社長のゴーサインが出た。

似鳥社長 「海外に出しても通用する商品開発をしていきたい」

相澤さんの顔が、終始きびしくて硬いのが印象的だった。ニトリの存続のために犠牲になった取り引き先のことが念頭にあるのか。あるいは気の抜けない立場に立たされた人間の顔つきなのか。元来の性格なのか。
いずれにしても、商品開発をするのは社長ではなく、相澤さんのような社員なのだ。

◆大塚家具本社ショールーム(東京・有明)

桐タンス「柳橋水車図」をカメラがゆっくりと映しだす。
10億円相当。職人が13年の歳月をかけて仕上げた。

大塚家具の売上高は700億円(2005年)。
200人余りの販売担当者はアドバイザーと呼ばれ、顧客1組に1人ついて案内をする。豊富な家具の知識とていねいな話術。一流ホテルなみのサービスが、大塚家具のモットー。
売るのは高級家具。スイス製のソファ、192万円。大理石でできたドイツ製ダイニングテーブル、220万円。イタリア製ソファ、483万円。すべて世界一流メーカーの商品。

大塚家具の前身は、埼玉県春日部にあった桐タンスの専門店。現在の大塚家具を築きあげたのは、大塚勝久社長(63歳)。すぐれたタンス職人だった父・千代三さんの失敗(いいものをその価値で売れなかった)から現在の接客が生まれた。いい家具の価値を、お客さんが納得するようにていねいに説明すれば、たとえ高くても売れるはずだ。

大塚社長 「やっと日本国内にいろんなランクの会社がそろった。全体をみたら、将来は共栄共存、みんながよくなるような気がする」

ショールームの受け付けカウンターの裏にあるアドバイザーの部屋にある貼り紙。

    自分が
      楽しくなかったら
    お客様も楽しくない


【アドバイザー・長尾道成さん(27歳)の巧みな接客術】

入社6年目。全国トップの長尾さんの個人売り上げは、約2億7000万円(2005年)。ことしは、さらに上回る勢い。先輩社員を追い越し、11人の部下を率いている。

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大塚家具でとり扱っているソファはおよそ700種類。
長尾さんは、軽妙な会話のなかからお客さんのニーズと好みを読みとり、商品を絞っていく。50分が経過、ちょうどいいころあいで長尾さんは、あるソファのところへ案内する。狙いすましたかのように熱が入った商品説明を受け、「ほしいものをわかってくれた」という境地でお客さんは商品決定。1時間で25万円のお買い上げ。
長尾さんは、ソファに座っているお客さんに対し、片膝を床について商品説明する。目の高さを意識しているのだろう。

お見送りは、お客さんの姿がみえなくなるまで。
長尾さんは、未成約であっても成約であっても、手書きの礼状を心がけている。

¬だ約→成約

長尾さんは夜、車を走らせ、花村康子さんのお宅を訪問。子ども用のベッドを求めて来店したが、部屋にうまく収まるかどうかわからず買うのを迷っていた。
長尾さんは、ベッドの寸法どおりに切ったクラフト紙を子ども部屋に置く。その上に寝ころぶ男の子。
ベッドの売り上げは7万円。長尾さんは、すかさず別の商品の写真を数枚みせる。それは、花村康子さんが来店時にみていた商品の写真なので、思わず購買欲を刺激される。

花村康子の夫 「僕も営業しているので、今後参考になることが多々あった。そういう面でもよかった」

花村康子 「すごく気もちよくしてくださる、うまい営業。こんなに楽しく買い物できるのかなと。やみつきになっちゃって」

後日、待ちこがれていたベッドが届き、喜んで寝ころぶ男の子。長尾さんは笑顔で満足げにながめている。
長尾さんは、いつも搬入の際に立ち会っているのだろうか。

◆日本の伝統家具メーカー

【東洋美術家具】

広島県府中市で、いまも桐タンスを作りつづける。婚礼家具で全国一の生産量を誇る。
昭和の最盛期に較べて、家具工場は半分に減っている。製造より修理の依頼がふえている。

タンス職人・山崎文弘 「母親、父親が買ってくれたものだから大事にしていた。一種の形見分けだから。タンスよりお金ちょうだいという、いまの時代では考えられないこと」

【松創】

同じく広島県府中市にある。
桐タンスの製造に早くから危機感を感じていた。どんなにいいものを作っても、婚礼家具を必要としない時代の変化。
松岡佳二社長は、テーブルやイスなどの西洋家具の製造を手がけることに決断。とまどったのは職人たち。桐タンス用の大きなカンナから慣れないカンナにもちかえて、美しい曲線を削れるようになるまで10年かかった。
いまでは、日本有数の高級家具メーカーに生まれ変わった。

松岡社長 「やりはじめたときはタンスが主流だから、なにをしてるんだといわれた。結果的には、そのとき蓄えた技術やノウハウが生きている」

◇感想

最も印象的だったのは、大塚家具のアドバイザー・長尾道成さん(27歳)の笑顔と接客方法。一応イケメンの部類に入る長尾さんには、ホスト精神が身についている。同じことをむさくるしいオジサンがした場合に、女性客の反応がどうちがうのかを較べてみたい。
おそらく大塚家具のアドバイザーの平均年齢は低いだろう。
家のような大きな買い物を含め、消費の選択権は女性が握っているといわれている。女性のハートを直撃する販売戦略を研究する必要があるのだろう。

ニトリは通販にも力を入れているようだ。その点、高級家具を接客を神髄にして販売している大塚家具は、通販が不可能。
富裕層相手の販売とはいえ、大塚家具の豊富な在庫管理、人件費とショールーム維持費について、不安はないのだろうか。

ニトリについては、イケア・ジャパンとの競争がどのような展開をみせるのか。


〔参照〕

ニトリ(フリー百科事典『ウィキペディア』)

イケア( フリー百科事典『ウィキペディア』)

世界最大級の家具店「イケア」が日本上陸、ローコスト経営の秘密が明らかに(日経ビジネス)




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この記事へのコメント

1. Posted by 榎   2006年06月09日 22:34
はじめまして。ぼくも見ました。
たしかにオープニングはナレーションと予告ぐらいでいいと思います。昔のスーパーテレビみたいな感じのやつです(いまもそうか)でもテーマによってはおおまかな業界の勢力図を役所さんが言ってくれる場合もあるので、全然しらない業界のときは助かります。

2. Posted by miko   2006年06月10日 08:28
榎さま

コメントありがとうございます。
案内役の存在は、シビアなビジネスの番組内容を別の角度から照らそうという意図だと、わたしはとらえています。が、くたびれた役所広司の顔が、わたしにはトーンダウンとしか感じられず、なぜ役所広司を起用しているのか不可解です。もうちょっと元気でさわやかだけれど、ビジネス一辺倒ではないイメージの役者に登場してもらいたいと思っています。
3. Posted by 榎   2006年06月10日 23:02
そこまで考えながら番組を見られてるとは。見習いたいと思います。
ぼくは高校が商業科で、勉強してる内に商業に興味がわいてきていろんな業界のマーケティング戦略を見ることが好きになったのですが、mikoさんはガイアの夜明けの主にどんなところを見ていらっしゃるのですか?
4. Posted by miko   2006年06月11日 01:41
榎さま

ドキュメンタリーはわりに観ているほうです。しかし本blogに感想をアップするのは限られています。ひとつのエントリーを書くのに、時間をとても消費しますので。

「ガイヤの夜明け」については、企業戦略を素人にもわかる内容で迫っているところは評価しています。宣伝効果があると思います。最も注目しているのは、時代の空気を感じるところです。
とはいえ、毎回シビアな内容なので、しんどいですね。それを緩和する作用をするべく設定されている案内役の役所広司が成功していないと、初回から感じています。わたしの勝手な感想にすぎないのですが。

最近、テレビ東京はドキュメンタリーに力を注いでいますね。
5. Posted by 榎   2006年06月11日 23:15
時代の空気ですか。現代の消費者のニーズがわかるのもまたおもしろいものですね。
テレビ東京はやはり日経なので経済関連が多いですね。でも最近は見やすいものになってきた気がします。

本ブログ、アップするのを楽しみにしていますのでゆっくりがんばってください。
6. Posted by miko   2006年06月12日 09:12
榎 さま

励ましていただきまして、ありがとうございます。

テレビ東京・月曜日放映の「カンブリア宮殿」もおもしろく観ています。ただ、ナレーションがNHK・「プロフェッショナル」の二番煎じなのが気になります。メインインタヴュアーが村上龍なのは、いかにもという感じです。彼はJMM(金融・経済を中心に専門家の声を聴くメルマガ)を発行していますし、経済を軸にしたものの見方を反映した本を書いていますからね。
同じくテレビ東京・土曜日昼放映の「ザ・ドキュメンタリー」は、日曜日昼・フジテレビ放映の「ザ・ノンフィクション」に似たトーンです。

日本テレビの「NNNドキュメント」を以前は愉しみにしていたのですが、最近はこころに響く番組が少ないように思います。30分(たまに55分)というのはキツイですね。重いテーマばかりなので、不完全燃焼の感があります。