2006年06月01日

『楢山節考』のラストシーンで雪が降るワケ

映画「楢山節考」の監督・今村昌平が5月30日、亡くなった。79歳。

わたしは原作者・深沢七郎の作品については、『言わなければよかったのに日記』(中公文庫)しか読んでいない。これは深沢七郎の『風流夢譚』が引き起こした嶋中事件(1961/2/1)より3年まえの1958年10月に刊行されたエッセイ集だが、タイトルから嶋中事件後だと錯覚していた。

「楢山節考」で想いだすのは、『文學界』(1998年2月号)に掲載された宮内勝典氏の「なぜ雪が降るのですか?」というタイトルの一文だ。

上記によると、宮内氏は深沢氏を2度訪ね、私信の往復も何度かあったという。宮内氏がニューヨークに住んでいたとき深沢氏の訃報に接し、その年の暮れ、コリーヌ・ブレ氏が宮内氏を訪ねてきた。ブレ氏はフランスの新聞の特派員をしていた頃、深沢氏にインタヴューしたことがあり、「楢山節考」について質問した。

「最後のところで、なぜ雪が降るのですか?」

深沢氏の答えは、「雪が降れば、なんの苦しみもなく凍死できるから」だったという。

おりんは苦しみながら餓死したのではなく、眠りこんで凍死したのである。

深沢七郎は1987年8月18日、《ラブミー農場の葡萄棚の下で、理髪店用の椅子に横たわったまま静かに亡くなった》。当時、いかにも渋沢七郎らしい最期だと報道されたのを憶えている。

以前に、ある家を取材で訪ねたとき、理髪店用の椅子が楽だという理由で、1脚だけ居間で使用しているのをみたことがあった。わたしはその椅子をすすめられて、座ったと記憶している。



miko3355 at 08:55│TrackBack(0) 

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この記事へのコメント

1. Posted by シャンティcoco   2006年06月05日 18:25
そういえば、まだ原作は読んだことがありません。映画がよかったので、それで満足してました。^^読んでみよう。
2. Posted by miko   2006年06月05日 19:17
シャンティcoco さま

メールしようと思ったのですが、PCが故障とか……。
ほんとにPCが動かなくなったら、大仰ではなく世界が変わりますね。

わたしも映画は観ましたが、原作は読んでいません。この種のテーマが苦手なので。